幹細胞を用いた再生医療の種類とは?メリット・デメリットを紹介
美容効果や若返り効果があるとして注目されている、幹細胞を用いた再生医療をご存じですか?
約60兆個の細胞で構成されているわたしたちの体ですが、毎日約200億個の細胞が死滅し、常に入れ替わっているとされています。
老化、病気、ケガなどによって細胞の機能が損なわれると、幹細胞によってその損傷の修復が行われます。
「再生医療はどんな治療なのか?」「治療を受けたいけれど金額が気になる」という方に向けて、この記事では、再生医療や幹細胞について、幹細胞を用いた再生医療の種類、メリット・デメリット、費用相場などをご紹介します。
幹細胞による再生医療に興味がある、治療を検討しているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
再生医療とは
再生医療とは、もともと人間がもっている「再生する力」を利用して、元通りに生活することを目指す医療です。
これまで治療法がなかった病気やケガに対して、新しい医療として治療が叶う可能性があり、難病の原因解明や薬の開発が進められているところです。
しかし、日本では現在、厚生労働省が承認していて、保険が適用となる再生医療等製品が10種類に限られており、まだまだ安全性や有効性は確認段階となっています。
幹細胞とは
再生医療で利用される幹細胞とは、絶えず入れ替わる組織を保つために、失われた細胞を再び生み出し補充する力をもった細胞です。
幹細胞は分化能(さまざまな細胞に変化する能力)と自己複製能(自分とまったく同じ能力をもった細胞に分裂することができる能力)を持っています。
また、幹細胞は大きく2つに分けられており、どのような細胞でも作り出すことができる多能性幹細胞と、決まった組織や臓器で消えていく細胞の代わりをつくり続ける組織幹細胞があります。
組織幹細胞の中でも、筋肉や軟骨に変化できる間葉系幹細胞が再生医療で多く使用されていて、間葉系幹細胞は脂肪由来、骨髄由来、歯髄由来、臍帯由来などが代表的です。
幹細胞を用いた再生医療
現在受けることができる再生医療や、将来受けられる可能性のある幹細胞を用いた再生医療は大きく3種類で、ES細胞、iPS細胞、体性幹細胞となります。
以下はそれぞれの再生医療について由来や特徴をまとめたものです。
ES細胞 | iPS細胞 | 体性幹細胞 | |
由来 | 胚からつくられる | 体細胞に遺伝子を導入する | 体の中に存在する |
特徴 | 分化能、増殖脳が高い | 分化能、増殖脳が高い | 分化能ではあるが万能なわけではない |
倫理上の問題 | あり | なし | なし |
臨床上の課題 | 腫瘍化、ガン化の恐れがある | 腫瘍化、ガン化の恐れがある | 増殖能が限定的 |
ここからは、幹細胞を用いた再生医療について詳しくご紹介します。
ES細胞
ES細胞は、人の初期胚から取り出した幹細胞で、多能性をもったままシャーレの中で培養し続けることができる細胞です。
「Embryonic Stem cell」の頭文字をとった言葉です。1981年にイギリスのエヴァンスがマウスのES細胞を樹立したのがはじまりで、パーキンソン病などの難病治療の道を開くことができると期待されています。
さらに、ES細胞は、ほぼ無限に増えることができ、体のどの部分の細胞にも変化できますが、受精卵から作り出されることが、倫理面で問題があるとされていることや、ガン化する可能性があること、拒絶反応が起こる可能性があることなどが問題視されています。
iPS細胞
iPS細胞は、京都大学の山中教授が世界ではじめて作製に成功したもので、人の皮膚や血液などの体細胞に少数の因子を導入して培養することで、ES細胞と同様にさまざまな細胞に変化する多能性幹細胞に変化できる細胞です。
ES細胞の倫理面や入手が困難な受精卵を用いる方法が問題となっている中で、それらの問題を回避するべく作製されたという経緯がありますが、人工的に作られた細胞のため、ガン化のリスクがゼロではないという懸念点があります。
iPS細胞の研究は日々進化しており、臓器再生なども研究され、末期臓器不全症の患者さんに対しての有効な治療法として問題解決を進めています。
しかし、まだまだ研究段階であり、再生医療として応用されていないのが現状で、さまざまな難病の治療薬を探索する研究が続けられています。
体性幹細胞
ES細胞やiPS細胞に比べて、もっとも医療への応用が進んでいるのは体性幹細胞で、人間の体のなかにもともとある細胞を使用する方法です。
前述した間葉系幹細胞も体制幹細胞の一つで、他にも神経幹細胞、造血幹細胞など複数の種類が存在します。
多能性を有するES細胞やiPS細胞に比べると、体性幹細胞は限定された種類にのみ分化するものですが、筋肉、軟骨、肌といったさまざまな種類に変身できる幹細胞でもあります。
1970年代に骨髄の中にあると発見されていた間葉系細胞ですが、骨髄由来の幹細胞は採取できる量が限られていました。一方で、2001年に骨髄と同等の能力があると発見された脂肪由来の幹細胞が注目されています。
幹細胞治療に問題点はある?メリットとデメリット
幹細胞治療に用いられているのは間葉系細胞であるとお伝えしましたが、治療の問題点はあるのでしょうか?
メリットとともにデメリットを把握して、納得のうえで治療を受けていただくために、ここからは、幹細胞治療のメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
以下は、幹細胞治療のメリットです。
- すでに病気やケガの治療に取り入れられている
- 副作用が少ない
体細胞治療は1970年から実際に活用されて治療が進められていて、安全な治療となるため副作用もほとんどないことで知られています。
ES細胞やiPS細胞のように万能なわけではありませんが、ガン化するリスクが少なく技術も確立しているため、治療を受けやすいという点がメリットといえるでしょう。
デメリット
以下は、幹細胞治療のデメリットです。
- さまざまな細胞に分化することができない
- 高額な医療である
体性幹細胞は、血液系の細胞に分化するなら造血幹細胞、神経細胞に分化するなら神経幹細胞といったように、さまざまな細胞に分化することはできません。
また、費用相場については後述しますが、保険で受けられる治療もあればまだまだ自由診療のクリニックも多く、受ける治療によっては費用が高額となってしまうことがデメリットとなります。
膝への人工関節術を避ける手段としても有効
幹細胞による再生医療は、膝関節に注射することですり減った軟骨が再生されて手術をしなくてもよくなる可能性があります。
幹細胞治療は、変形性ひざ関節症という、膝の関節がすり減ることで徐々に炎症が起こっていき、進行してしまう病気に有効だとされています。
手術はもともとの持病や年齢によるリスクがあり選択したくないという方も多く、海外のスポーツ選手なども取り入れている最先端の治療として、幹細胞治療が注目されています。
変形が初期の段階でも、変形が進行する前に幹細胞治療を受けることで変形性ひざ関節症の予防ができます。
幹細胞による再生医療にかかる費用は?
幹細胞治療は、保険適用の場合は数百万~1500万円程度の相場から2~3割の負担となるため、500万円以内には収めることができるという治療です。
この場合、医療費が高額となるため、年収によって高額療養費制度を利用できます。
保険適用にならないケースでは、安くて数十万円、高額なもので1000万円以上となります。
基本的に間葉系幹細胞を用いた治療はほとんどが自由診療で、保険が適用されないため全額自己負担となることが多いです。
事前にクリニックに確認し、金額にも納得したうえで治療を受けるようにしましょう。
まとめ
再生医療や幹細胞について、幹細胞を用いた再生医療の種類、メリット・デメリット、費用相場などをご紹介しましたが、参考になりましたか?
再生医療として幹細胞治療を行うことで、たるみやシワ、毛穴など気になる肌悩みを改善させたり、病気の進行を遅らせたりするという効果があります。
幹細胞治療は、肌悩みや病気を根本的に改善させることができるため、何度も美容クリニックで治療を繰り返し受けるよりも、幹細胞治療を選択するという方もいらっしゃいます。
再生医療に興味がある、幹細胞治療をはじめたいと思っているという方は、この記事を参考に治療方法の一つとして検討してみてください。