幹細胞とは?美容に用いられる治療の特徴を紹介

近年注目を集めている幹細胞は、医療の分野だけではなく美容に用いることでアンチエイジング効果が期待できます。
外から補う美容と違い、自分自身の細胞によって内側から美しくなっていくことを目的としているため、一時的ではなく継続的な効果が期待できる治療です。
この記事では、幹細胞とは何なのかを簡単にわかりやすくご紹介したあとに、幹細胞の代表例、幹細胞治療の特徴をそれぞれご紹介します。
幹細胞の理解を深めたいという方、幹細胞治療を考えているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
幹細胞とは
皮膚や血液は細胞の寿命が短く絶えず入れ替わり続けています。幹細胞とは、この失われた細胞を再び生み出して補充する能力を持っている細胞のことです。
また、幹細胞と呼ばれるためには、皮膚や赤血球、血小板などさまざまな細胞を作り出す能力(分化能)と、自分とまったく同じ能力をもった細胞に分裂する能力(自己複製能)の、2つの能力が必要です。
まずは、大きく2つに分けられる幹細胞の種類をご紹介します。
多能性幹細胞
多能性幹細胞は、体の中にあるさまざまな組織幹細胞を作り出すことができる幹細胞です。
ES細胞、EG細胞、iPS細胞などが多能性幹細胞と呼ばれる細胞で、神経細胞や心筋細胞などの体細胞で病気の原因解明や薬効に活用されているとともに、細胞そのものを患者さんに移植する細胞移植治療も注目されています。
組織幹細胞
組織幹細胞とは、骨髄や肝臓などに存在する未分化な細胞のことで、さまざまな場所で見つかっている細胞です。
骨折が治る、髪の毛が生えてくるなどの働きは、それぞれの場所に存在する組織幹細胞の自己複製能によって行われているのです。
しかし、役目が決まっていると考えられていた組織幹細胞ですが、骨髄の中に存在する間葉系幹細胞が筋肉や軟骨、脂肪、神経に分化すると発見されています。
幹細胞の代表例
特殊な細胞である幹細胞は、その由来や能力などからいくつかの種類に分類されています。
ここからは、幹細胞の代表例をご紹介します。
ES細胞
1981年にイギリスのエヴァンスが、マウスES細胞を樹立したのが始まりとされているES細胞は「Embryonic Stem Cell」の略で、日本語だと「胚性幹細胞」となります。
ES細胞は、発生初期の胚細胞から作られる細胞で、私たちの体を構成するあらゆる細胞へと変わることができます。
また、半永久的に維持することができるといわれており、1998年にアメリカのトムソンらがヒトでもES細胞を樹立させました。
胚を破壊することで得られるES細胞は、不妊治療で不要となった余剰胚を提供者の同意のもと使用して作られていますが、胚を破壊することに違和感を抱いている人も少なくありません。
iPS細胞
2006年に誕生した新しい多能性幹細胞であるiPS細胞は、世界で初めて作製に成功した京都大学の山中教授によって名付けられたものです。
「induced pluripotent stem cell」の頭文字をとったもので、再生医療や病気の原因解明、新薬の開発などに活用できると考えられています。
ES細胞と違い、皮膚や血液などの採取しやすい体液を使用して作れることや、拒絶反応が起こりにくいことが画期的だとされています。
現在は研究が進められている段階であり、難病治療薬を探索する研究、創薬治験などが行われています。
体性幹細胞
体性幹細胞は、体の中のさまざまな組織にある幹細胞で、すべての部位に変化できるわけではありませんが、筋肉や軟骨、肌などさまざまな種類に変化でき、再生医療でもっとも多く利用されている幹細胞です。
ES細胞やiPS細胞と違い、拒絶反応を起こすこともなく、自分自身の細胞を用いるため安全となります。
幹細胞治療の特徴
幹細胞を美容医療に用いることにはどのような特徴があるのでしょうか?
ここからは、幹細胞治療の特徴をご紹介します。
根本的なエイジングケア治療ができる
幹細胞治療は、シワ、たるみといった原因になっている肌細胞の減少や機能低下に対して、培養して増加させた肌細胞を移植するため根本的なエイジングケア治療ができます。
ヒアルロン酸のように吸収されてしまうこともなく、肌の組織に馴染んで体の一部となっていくので完全に消失せずに、個人差がありますが定期的な治療によってより高い効果を実感できます。
また、自分の細胞の働きを利用することで、3か月ほどかけてゆっくり肌に馴染んでいくため、いきなり変化するというよりは、自然なエイジングケアが叶います。
病気の予防ができる
病気になってしまう原因は、体の中の部位が損傷して症状が悪化することです。原因は環境、ストレス、生活習慣などさまざまですが、気が付かないうちに病気が徐々に進行していることもあります。
幹細胞治療によって、ダメージを受けている部位に幹細胞が到達して、傷みつつある部位を早期に修復することで、病気として発症する前に予防することができるのです。
幹細胞治療の種類
幹細胞治療には以下のような種類があります。
線維芽細胞移植
真皮の線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を生成する役割を担っていますが、年齢とともに減少し肌老化を進行させます。
真皮線維芽細胞移植では、耳の後ろから採取した皮膚の線維芽細胞を増殖、培養し、その細胞を直接肌に戻すことで機能そのものを改善させる治療です。
脂肪注入法
脂肪注入法は、自分の腹部などから採取した脂肪を遠心分離し、しこりや石灰化の原因となってしまう不純物を取り除いた状態で細胞を培養します。
注射器で局所投与することによって、年齢とともに気になる肌のくぼみなどをふっくらさせて、ハリを復元することで若々し肌に整えます。
幹細胞治療の流れ
幹細胞治療は以下のような流れで行われます。
- カウンセリング
- 血液採取
- 脂肪採取・肌細胞採取
- 幹細胞の培養
- 幹細胞の投与
カウンセリングによって治療についての説明や不安なこと、疑問点などを医師と相談します。その後治療開始前に血液検査によって感染症の有無などを確認します。
脂肪や線維芽細胞を採取し、細胞培養センターにて幹細胞を3~4週間ほどかけて培養。
培養された幹細胞を、希望に合わせて点滴投与、または局所投与します。
点滴投与は全身に幹細胞をいきわたらせることで脳、肺、肝臓、血管などさまざまな部位に働きかけることができ、局所投与は小ジワやほうれい線といった局所的に気になる部位に直接アプローチすることができます。
幹細胞治療について詳しく知りたいという方は、こちらのページもご覧ください。
ダウンタイムやリスクについて
幹細胞治療は、自分の脂肪を採取して培養した幹細胞を投与する治療です。そのため、拒絶反応やガン化してしまうリスクは少ないといわれています。
しかし、脂肪採取や皮膚採取の際に数日間は切開部分に痛みが出ることもあるため、鎮痛剤を飲むなどの対処が必要です。
また、点滴や注射で針を刺す治療となるため、針による痛みや腫れ、赤み、内出血などが起こることもあります。
脂肪採取や皮膚採取は麻酔をして行うため、ほとんど痛みを感じることはありませんが、数日間は安静に過ごすようにしましょう。
まとめ
幹細胞とは何なのか、幹細胞の代表例、幹細胞治療の特徴をそれぞれご紹介しましたが、参考になりましたか?
幹細胞は、失われた細胞を再び生み出して補充する能力を持っている細胞のことで、医療の分野だけではなく美容医療でも再生医療として利用されています。
ヒアルロン酸注射や脂肪注入などと比較すると、長期的に効果が持続することや、体への馴染みがよくアレルギーが出にくいなどのメリットが挙げられます。
自分の細胞を使用して若返りを図る方法なので、自然で健康的に若々しい肌を取り戻すことができます。
小ジワやたるみが気になるという方は、この記事を参考に、ぜひ幹細胞治療を検討してみてください。