幹細胞はどこにある?間葉系幹細胞を使った治療の具体例を紹介
美容や医療の現場で注目されている幹細胞は、アンチエイジングが期待できる再生医療として人気を集めています。
しかし、実際に幹細胞にはどのような種類があるのか?幹細胞はどこにあるのか?といった素朴な疑問を抱えている方も多いですよね。
また、実際に幹細胞治療でどのような症状や疾患に効果があるのかなど、まだまだわからないことが多い治療ともいえます。
幹細胞治療はシワやたるみといった美容に対する効果だけではなく、関節の病気や筋肉などの損傷、脳梗塞の後遺症などにも効果があるとして、臨床試験が進められている治療です。
この記事では、幹細胞の種類、間葉系幹細胞はどこにあるか?間葉系幹細胞を用いた治療例についてご紹介します。
幹細胞治療に興味がある方、治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
幹細胞の種類
幹細胞とは失われた細胞を生み出し、補充する能力をもっている細胞のことで、さまざまな細胞に変化する「分化能」と、自分と全く同じ能力をもった細胞に分裂する「自己複製能」をもっています。
また、どのような細胞でもつくりだすことができる多能性幹細胞と、きまった組織や臓器で細胞をつくり続ける組織幹細胞に分けられます。
しかし、最近になって組織幹細胞も実はさまざまな細胞に分化できるということがわかっており、人から採取した幹細胞を治療に用いるというケースが増えています。
まずは、そんな幹細胞の種類についてご紹介します。
ES細胞・iPS細胞
ES細胞とは、将来胎児になる細胞である初期胚から取り出した幹細胞で、あらゆる細胞に分化できる能力をもっている多能性幹細胞として、再生医療への応用が注目されていましたが、ES細胞をつくるためには多くの胚が必要となることで倫理面に問題があることや、移植時の拒絶反応があることなどからさまざまなハードルがあるとされています。
そんななか、2006年に誕生した新しい多能性幹細胞がiPS細胞です。
iPS細胞は、京都大学の山中教授が世界ではじめて作製に成功したもので、再生医療や新しい薬の開発などに活用できると考えられています。
ES細胞が胚から細胞を取り出すのに対して、iPS細胞は皮膚や血液などから体細胞を採取して作ることができるため、倫理面での問題もクリアしています。
しかし、移植時の拒絶反応については安全性が確立されておらず、体内でガン化してしまう恐れもあることから、現在も研究が続けられています。
間葉系幹細胞
間葉系幹細胞は、すでに美容や医療の分野で使用されている幹細胞で、組織幹細胞でありながらさまざまな種類の細胞に分化する能力が高い幹細胞です。
1960年代に骨髄細胞から発見されて以降、2000年代には脂肪細胞からも発見されたことで治療の幅が広がったといえます。
ES細胞やiPS細胞に比べると、分化能や増殖能が強いとはいえない間葉系幹細胞ですが、倫理面の問題やガン化のリスクがないということをクリアしていることから、実際に使用や治験が進められています。
近年、免疫抑制作用をもつことや、腫瘍に集積する性質があることも報告されている間葉系幹細胞は、さまざまな治療への可能性のある幹細胞として研究が行われているのです。
間葉系幹細胞はどこにある?
間葉系幹細胞と呼ばれる幹細胞は、主に以下の場所に存在しています。
- 骨髄
- 脂肪
- 皮膚 など
間葉系幹細胞はMSCとも呼ばれている細胞で、骨髄、脂肪、皮膚などのさまざまな場所に存在しています。また、免疫調整機能が備わっているため、移植しても拒絶反応やガン化のリスクが少ないという特徴があります。
ES細胞やiPS細胞はまだまだ研究段階であるのに対して、間葉系幹細胞を用いた治療はすでに実用化されています。
骨髄由来が発見されてから、多くの骨髄由来の間葉系幹細胞治療が行われていましたが、脂肪由来の間葉系幹細胞が採取できることがわかり、治療の幅が広がっています。
骨髄由来の間葉系幹細胞は、骨髄の中にある細胞のうち、およそ0.01%なのに対して、脂肪組織に含まれる脂肪由来の間葉系幹細胞は500倍もの量が含まれていることもわかっています。
通常、間葉系幹細胞は加齢とともに減少していきますが、脂肪由来のものは高齢者から得たものでも問題なく増殖することができるという点も、脂肪由来の幹細胞が優れているといえます。
間葉系幹細胞を用いた治療例
脂肪由来の間葉系幹細胞が発見されてから、幹細胞治療がより身近になりさまざまな症状や疾患において、幹細胞治療を行うことができるようになりました。
まだまだ治療できる場所は少ないものの、研究や治験が進められていることで今後の期待も高まります。
ここからは、間葉系幹細胞を用いた治療例をご紹介します。
シワ・たるみ治療
肌は真皮層にあるコラーゲンやエラスチンによって弾力性やハリが保たれています。しかし、コラーゲンやエラスチンは紫外線の影響で破壊されたり、加齢によってコラーゲンやエラスチンをつくりだす線維芽細胞の働きが低下したりします。
そうなると、肌の表面にシワやたるみが現れるようになり、ターンオーバーも正常に行われなくなります。
ターンオーバーが正常に行われないことによって皮下脂肪が厚くなったり、筋力が衰えて皮膚や皮下脂肪を支えきれなくなったりして、重力によって余計にたるみが生じるようになります。
シワやたるみの治療としてヒアルロン酸注射やボトックス注射が主に行われますが、これらは持続性がないため継続して定期的に治療を受ける必要があります。
しかし、シワやたるみの気になる部位に幹細胞を培養したものを注射することで、線維芽細胞を活性化させてコラーゲンやエラスチンを増生するため、根本的な治療ができるのです。
関節への治療
関節の病気として、変形性関節症が代表的です。変形性関節症は、膝や鼠径部の関節の筋力が低下することや、加齢、肥満などの原因によって関節の機能が低下し、軟骨がすり減ることによって変形し断裂してしまう疾患。
変形性関節症は、初期の段階では歩きはじめや立ち上がったときに痛みが生じる程度ですが、病気が進行してしまうと、何もしていないときや寝ているときにも痛みを感じるようになり、日常生活に支障をきたします。
間葉系幹細胞を患部に直接注射することで、幹細胞が軟骨を含むさまざまな細胞に分化し、傷ついた軟骨を再生させることができます。
さらに、脂肪由来幹細胞の炎症を抑える効果によって、症状の悪化を防いだり、痛みを緩和させたりすることもでき、症状の改善が期待できます。
筋肉・腱・靭帯への治療
筋肉や腱、靭帯をスポーツで痛めてしまうことは多くあります。従来の治療では、どのような治療であったとしても一定期間の安静が求められ、組織が回復して治癒するまでには数週間~数か月程度は必要でした。
しかし、損傷した部位に間葉系幹細胞を注射することで、組織を修復して再生させることができます。そのため、本来なら手術をしなければならないほどのケガでも治療期間を短縮でき、早期復帰が可能となります。
手術後に心配される後遺症のリスクも回避できるため、海外ではすでに多くのアスリートやプロスポーツ選手が治療を受けていて、最先端の治療として国内外で期待されているのです。
脳梗塞の後遺症への治療
日本人の死因トップ3に入るとされている脳卒中。脳卒中は脳血管に障害を起こしてしまう疾患で、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞に分けられます。
脳梗塞は脳の血管が詰まることで発症しますが、発症から4~5時間以内に血栓を溶解する作用のある薬によって回復させることが必要となります。
しかし、発症から時間が経ってしまっていることなどが原因となり、機能障害が後遺症という形で残ってしまうことがあるのです。
脳は一度損傷を受けると再生しないとされていましたが、さまざまな研究によって幹細胞を投与することで、脳梗塞や脳梗塞の後遺症に対して効果があることがわかっています。
これまで、他の治療法がなかった脳梗塞の後遺症に対して効果が期待できる事例として、臨床試験が進められています。
まとめ
幹細胞の種類、間葉系幹細胞はどこにあるか?間葉系幹細胞を用いた治療例についてご紹介しましたが、参考になりましたか?
間葉系幹細胞には骨髄由来、脂肪由来、皮膚由来などが存在し、そのなかでも脂肪由来の幹細胞治療には注目が集まっています。
美容目的で行うアンチエイジングだけではなく、さまざまな疾患や後遺症に効果を発揮する治療として期待されているのです。
今回ご紹介した疾患や症状以外にも、気になる症状があれば幹細胞治療を実施しているクリニックに問い合わせてみてください。
幹細胞治療や再生医療に興味があるという方は、ぜひこの記事を参考に治療を検討してみてくださいね。