ボトックス注射の後で頭痛が起こる原因は?吐き気や倦怠感はいつまで続くのか
ボツリヌストキシンを利用した美容治療法であるボトックス注射は、治療後に副作用として頭痛が起こることがあります。
すべての人に頭痛や倦怠感の症状が起こるわけではありませんが、中には吐き気を伴う場合もあるなど深刻な体調変化が起こる患者さんもいます。
ボトックス注射の後に頭痛が起こる原因はなんなのでしょうか。この記事では、ボトックスの副作用の一つとして頭痛を発症するしくみを解説していきます。
また、ボトックスは偏頭痛の治療方法として利用される場合もあります。副作用への対処法とともに説明しているため、参考にしてください。
目次
ボトックス後に頭痛が起こる原因
ボトックスの後で頭痛が起こるのは、注射をしたことによって筋肉の緊張と弛緩のバランスが崩れるからです。
ボトックス注射の成分であるボツリヌストキシンには、筋肉を部分的に緩ませる効果があり、歯ぎしりや眉間にできたシワの改善に用いられます。
顔周辺にボトックス注射をした場合、表情筋が一時的に弛緩している部分と緊張している部分に分かれるため、力の差がストレスとなり頭痛が起こってしまいます。
あるいは、弛緩して動きづらくなった筋肉の動きを助けるために、他の部分の筋肉に力が入り緊張することが頭痛の原因となる場合もあります。
いずれにせよ、ボトックス後の頭痛は必ず起こるものというわけではありません。酷い頭痛が起こる事例は稀なケースです。
おでこ、眉間のボトックスによる頭痛
おでこや眉間にボトックスを施術した場合、特に頭痛が起こりやすくなります。おでこや眉間にシワができてしまう原因は、表情筋の過剰な緊張です。
ボトックスを緊張している箇所に注射すると、筋肉の緊張を抑制するアセチルコリンという神経伝達物質の分泌が抑制され、筋肉が緩んでシワ改善につなげることができます。
しかし、シワができるほど強い緊張状態にあった筋肉が急に弛緩すると、逆に筋肉が動かしづらくなり、顔全体が重く感じられることがあります。
このように、急に動きにくくなった筋肉を無理に動かそうと無意識にまぶたや口周辺が緊張することも、ボトックス後の頭痛の大きな原因です。
吐き気を伴う場合もある
歯ぎしりやエラ張りの治療を目的としたボトックスの後、強い頭痛とともに吐き気が起こることもあります。
ボトックスに含まれているA型ボツリヌス毒素という成分に対する反応が強く現れた場合、吐き気や飲み下しの障害、言語障害などが起こる場合があります。これは、ボツリヌストキシンに対する一種のアレルギー反応といえます。
歯ぎしりやエラ張りを改善するためには、顎周辺にボトックスを注射する必要があり、喉や首周辺の筋肉に影響を及ぼしやすくなってしまいます。
顎や喉の筋肉が急に弛緩した影響で吐き気の症状が出た場合、数日以内で症状が改善しなければ治療を受けたクリニックに相談しなくてはいけません。
特に、強い吐き気に伴って倦怠感や発熱が見られた場合は、注意が必要です。
ボトックスについては以下の記事でも解説しています。参考にしてください。
→ボトックスを打ったら飲酒してはいけない?ボトックスの副作用を詳しく解説
→エラボトックスのダウンタイムは短い!ダウンタイムの症状や過ごし方を解説
→エラボトックスをやりすぎるとどうなる?失敗しないためには?症状や対策法を紹介
ボトックス後の頭痛はいつまで続く?
ボトックス注射後の頭痛は、多くの場合2、3日から1週間の間に収まることがほとんどです。
そもそも深刻な頭痛に発展する件数自体が少なく、安静にして過ごしたり頭痛薬を服用したりすることで改善することができます。
稀に一ヶ月程度症状が続くこともあるため、対処法について解説します。
ボトックス後の頭痛の対処法
額やエラ張りにボトックスを注射し、頭痛がなかなか改善しない場合には数日間激しい運動や高温の入浴を避けて、安静に過ごすように心がけましょう。
そのため、ボトックス注射を受ける時期が決まったら、周辺に体を酷使する予定を入れておかないことが重要です。
ボツリヌストキシン製剤は、鎮痛剤や抗生物質との飲み合わせに特に問題はありません。
市販の痛み止めや頭痛薬を利用する方法もありますが、可能ならもう一度クリニックを受診し薬剤師の方から薬の説明を受けるほうがいいでしょう。
偏頭痛の治療として用いられるボトックス
ボトックス注射は偏頭痛の治療として用いられることもあります。偏頭痛とは、慢性的に強い頭痛が起こり、それが数時間続く症状をいいます。
いわゆる「頭痛持ち」と呼ばれる状態のことで、頭痛の代表的な症状です。痛みは頭部の左右どちらか一方で起こる場合と、両側で起こる場合の2種類があります。
偏頭痛の原因
偏頭痛の原因には、これといった要因が特定されているわけではありません。多くの偏頭痛は原因が見つからず、根本的な治療ができない状態となっています。
一方で、強い筋肉疲労や精神的なストレス、偏った食生活や生活リズムの乱れ、不眠などから偏頭痛が起こることも確認されています。
また、特定の食物に対するアレルギー反応としての頭痛も起こり得ます。
あるいは他の疾患が原因となって引き起こされている頭痛、肩こりや風邪の症状として現れる偏頭痛などもあり、偏頭痛を起こす要因は実に様々です。
ボトックス注射が偏頭痛の治療に用いられる理由
2000年頃、アメリカで美容治療のためにボトックス注射を受けた女性から長引く頭痛が改善したという報告がなされるようになりました。
一説には、アメリカの頭痛持ちの女性の中でボトックス注射を受けた方の50%以上が、側頭部または後頭部の頭痛を解消できたとも言われています。
眉間の筋肉には、三叉神経という脳幹につながる神経が通っています。脳幹は自律神経を統括する重要な脳の部位であり、呼吸や消化吸収、平衡感覚の制御などを行っています。
三叉神経の緊張は、脳幹に対するストレスにつながり筋肉の過剰な緊張や痛みを発症する要因となります。
ボトックスを眉間や額に注射することで、三叉神経がリラックスし、脳幹への負担が減ることで頭痛も解消されるのでは、というのが偏頭痛解消の仮説の一つです。
ボトックスと偏頭痛解消の関係はまだ分からない点もありますが、筋肉を弛緩させるという性質が関係して痛みを感じにくくさせているのかもしれません。
ボトックスによる頭痛を避けるためにできること
ボトックス注射を受けたことによる頭痛やその他の副作用を避けるには、ダウンタイムの過ごし方が重要です。
ボツリヌストキシン製剤を利用した治療の後には、ダウンタイムの必要がほとんどないと言われる場合もありますが、実際には数時間から数日は経過を観察することが推奨されています。
ダウンタイム中の注意点についてまとめました。
ボトックス後のダウンタイムの注意点3つ
ボトックス注射を受けた後、ダウンタイムで注意すべき点は以下の通りです。
- 注射した場所を強く刺激しない
- 注射したあとすぐ横にならない
- 必要に応じて患部を冷やす
注射を打った箇所を触ったり、洗顔やマッサージなどで強く擦ったりしないことが重要です。
針で傷がついている箇所から細菌感染が起こったり、注入したボツリヌストキシン製剤が周辺に広がって効果が薄くなったりするかもしれないからです。
同じ理由で、注射のあとすぐ横になることも避けなくてはいけません。ボトックスが患部に定着せずに広がってしまう要因となります。
これらは頭痛や副作用を防ぐための直接的な対処法とは異なりますが、注射の効果をしっかし出すためには注意しておく必要があります。
また、注射した箇所を冷やすことは、血管を収縮させることで製剤の成分が治療すべき場所にと止まりやすくすることと、術後の痛みを和らげることにつながります。
更に、急に体を動かしたり疲労をためたりすると、頭痛や倦怠感が起こるリスクが大きくなってしまいます。ダウンタイム中は、精神的にも安定して過ごせるように前後のスケジュールを調整してから治療を行うようにしてください。
まとめ
ボトックス注射と頭痛の関係について解説しました。
ボトックスを施術した後で頭痛が起こるケースはそれほど多くありません。また、アメリカを中心に偏頭痛の治療にボトックス注射が利用されるなど、ボトックスと頭痛の関係はまだまだ研究の途中という状況です。
ただ、副作用として吐き気を伴う頭痛が報告されていることは確かであり、治療後の無理な運動や労働で副反応が悪化することも報告されています。
したがって、シワ改善やエラ張りの治療のためにボトックス注射を行った後は、患部を刺激しないように安静に過ごすことが求められます。
もともと痛みに敏感な方や、頭痛持ちで副作用が心配だという方は、予めクリニックの医師にそのことを相談し、対処のための薬を準備してもらうなどの対策を取りましょう。